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〜 北陸新幹線と並行在来線 〜

交通システム工学科3年 3061番 T.S

1. 北陸新幹線の概要

 北陸新幹線とは、東京を起点として長野、新潟、富山、金沢、福井の主要都市を経由し、大阪までを結ぶ計画の整備新幹線である。このうち東京駅〜高崎駅〜長野駅間は、長野オリンピックの開催に合わせ、1997(平成9)年10月1日に営業運転が開始された。この区間は、北陸新幹線の一部であるが、正式名称の「北陸新幹線」では旅客案内上の混乱を招く可能性があったため便宜的に「長野新幹線」と案内されていたが、2015(平成27)年3月14日の長野駅〜金沢駅間の営業運転開始に伴い「北陸新幹線」に統一された。また、長野県の要請によりJR東日本管内では、「北陸新幹線(長野経由)」と表記され案内されている。計画では大阪まで結ばれる予定で、金沢駅〜敦賀駅間は2023(平成35)年の春に開業予定である。


2. 北陸新幹線の運行形態

 2015(平成27)年3月14日現在、東京駅〜高崎駅〜金沢駅間で営業運転が行われている。北陸新幹線の起点は高崎駅であるが、高崎駅を発着とする列車はなく東京駅まで乗り入れている。そのため、東京駅〜大宮駅間は東北新幹線、大宮駅〜高崎駅間は上越新幹線と線路を共用している。東京駅〜上越妙高駅間はJR東日本、上越妙高駅〜金沢駅間はJR西日本が運行を担当しており、境界駅の上越妙高駅は全列車が停車しないため長野駅で乗務員交代が行われる。運行形態としては、東京〜金沢間の主要駅のみに停車する「かがやき」、東京〜金沢駅間の各駅に停車する「はくたか」、富山〜金沢駅間を運行するシャトルタイプの「つるぎ」、東京〜長野間を運行する「あさま」の4種類が運行されている。東京駅〜金沢駅間を最速で2時間28分で結んでいる。車両は、JR東日本所属のE7系、JR西日本所属のW7系が使用されている。E7/W7系は普通車のほかに、グリーン車とグランクラスが連結されており、12両編成で運行されている。また、東京〜長野間の「あさま」では8両編成のE2系も使用されているが順次E7系に置き換えられている。
北陸新幹線の運行形態

図1 北陸新幹線の運行形態
E7系/W7系(金沢駅)

写真1 E7系/W7系(金沢駅)


3. 並行在来線の概要

 並行在来線とは、整備新幹線区間を並行する形で運行する在来線のことである。整備新幹線に加えて並行在来線を経営することは営業主体であるJRにとって過重な負担となる場合があるため、沿線全ての道府県及び市町村から同意を得た上で、整備新幹線の開業時に経営分離されることとなっている。
 1997(平成9)年10月1日の北陸新幹線(高崎駅〜長野駅)の開業時には、JR信越本線の横川駅〜篠ノ井駅がJRから経営分離された。現在では、横川駅〜軽井沢駅間は廃止となりバスに転換された。軽井沢駅〜篠ノ井駅間は第三セクターのしなの鉄道に移管され、しなの鉄道しなの鉄道線として運営されている。
 2015(平成27)年3月14日の北陸新幹線長野駅〜金沢駅の開業では、JR信越本線の長野駅〜直江津駅間とJR北陸本線の金沢駅〜直江津駅間がJRから経営分離された。JR信越本線の長野駅〜妙高高原駅間は「しなの鉄道」、妙高高原駅〜直江津駅間とJR北陸本線の市振駅〜直江津駅間は「えちごトキめき鉄道」、倶利伽羅駅〜市振間は「あいの風とやま鉄道」、金沢駅〜倶利伽羅駅間は「IRいしかわ鉄道」に移管され各鉄道事業者によって運営されている。
並行在来線の概要

図2 並行在来線の概要
3-1. しなの鉄道

 しなの鉄道は、1997(平成9)年10月1日の北陸新幹線(高崎駅〜長野駅)の開業に伴いJRから経営分離されたJR信越本線の軽井沢駅〜篠ノ井駅間を経営する会社として設立された鉄道事業者である。新幹線開業と同時に軽井沢駅から篠ノ井駅までの65.1kmを結ぶ鉄道路線としてしなの鉄道しなの鉄道線が開業した。2015(平成27)年3月14日に北陸新幹線長野駅〜金沢駅の開業に伴い、JRから経営分離されたJR信越本線の長野駅〜直江津駅間のうち長野県区間である長野駅〜妙高高原駅間をJR東日本から運営を引き継ぎ北陸新幹線長野駅〜金沢駅の開業と同時に長野駅から妙高高原駅までの37.3kmを結ぶ鉄道路線としてしなの鉄道北しなの線が開業した。
 しなの鉄道は、しなの鉄道線と北しなの線の2路線を運行している。しなの鉄道線の運行形態は、軽井沢駅〜篠ノ井駅〜信越本線長野駅の全区間を運行する列車のほか、軽井沢駅 〜小諸駅間、小諸駅、上田駅、戸倉駅〜信越本線長野駅間を運行する列車があり、1時間に1〜3本程度運行されている。篠ノ井駅で折り返す列車はなく、列車はすべて信越本線長野駅まで直通運転されている。信越本線の篠ノ井駅〜長野駅間は、JR東日本だけでなくJR東海が運行する特急しなのやJR貨物が乗り入れているため、各JR間での調整が必要などの理由によりJR東日本が運営し、しなの鉄道が乗り入れる方式となっている。
 北しなの線の運行形態は、長野駅〜妙高高原駅間の往復が基本となっており1時間に1 〜2本程度運行されている。また、長野駅〜豊野駅間を往復する列車も設定されているほか、しなの鉄道線の小諸駅から妙高高原駅との間を直通する列車も設定されている。また、豊野駅を起点とするJR飯山線が長野駅まで乗り入れている。終点の妙高高原駅はえちごトキめき鉄道との境界駅であるが、今のところ相互直通運転は実施されていない。車両は、しなの鉄道線で使用されている115系の他に北しなの線開業に伴いJR東日本から新たに譲渡された115系が使用されている。
 しなの鉄道では、北陸新幹線金沢延伸と、北しなの線開業に向けてしなの鉄道の利用促進と沿線地域の活性化を図るために2014(平成26)年7月に観光列車「ろくもん」が導入された。車両は115系を改造したものであり、JR九州のクルージングトレイン「ななつ星」をデザインした工業デザイナー水戸岡鋭治氏がデザインを担当している。車内のイス、テーブルなどには長野県産の木材が使用されている。土曜・休日を中心に運行されており、全席普通車指定席で1日あたり下り2本、上り1本が運行されている。食事付きプラン(しなの鉄道1日乗車券・指定券込)と乗車券指定席プランがあり、食事付きプランでは長野県産の食材を使用した料理が堪能できる。
しなの鉄道115系(妙高高原駅)

写真2 しなの鉄道115系(妙高高原駅)
しなの鉄道観光列車「ろくもん」

写真3 しなの鉄道観光列車「ろくもん」

3-2. えちごトキめき鉄道

 えちごトキめき鉄道は、2015年(平成27年)3月14日の北陸新幹線の長野駅〜金沢駅間の開業に伴い、JRから経営分離されたJR信越本線の長野駅〜直江津駅間のうち新潟県区間である妙高高原駅〜直江津駅間とJR北陸本線の金沢駅〜直江津駅間の新潟県区間である市振駅〜直江津駅間の運営を担う鉄道事業者として、新潟県と上越市、糸魚川市、妙高市などからの出資により設立された。妙高高原駅〜直江津までの37.7kmを結ぶ鉄道路線の妙高はねうまラインと市振駅〜直江津駅までの59.3kmを結ぶ鉄道路線の日本海ひすいラインの2路線を運営している。
 妙高はねうまラインの運行形態は、妙高高原駅〜直江津駅までの全区間を運行する列車が1時間に1本程度運行されているほか、新井駅〜直江津駅間を運行する列車が朝夕を中心に設定されている。このほかに、信越本線の新潟方面から特急しらゆきや北越急行が上越妙高駅、新井駅まで乗り入れている。しなの鉄道北しなの線との相互直通運転は実施されていない。車両は、JR東日本から譲渡されたE127系が使用されている。形式名は、えちごトキめき鉄道を意味するETが付け加えられたET127系として運用されている。
えちごトキめき鉄道ET127系(直江津駅)

写真4 えちごトキめき鉄道ET127系(直江津駅)
 日本海ひすいラインの運行形態は、あいの風とやま鉄道の泊駅〜直江津駅までの運行が基本となっており、1時間から1時間半に1本程度運行されている。このほか、朝夕を中心に糸魚川駅〜直江津駅を運行する列車が設定されている。あいの風とやま鉄道との境界駅は市振駅であるが泊駅までえちごトキめき鉄道が乗り入れている。車両は、JR西日本のキハ122形気動車をベースとしたET122形が新造され導入された。全区間が電化されているが経営分離区間の中でも輸送密度が低いことや糸魚川駅〜梶屋敷駅間のデッドセクションを境に電化方式が異なっていることから気動車で運用されている。
えちごトキめき鉄道ET122形(泊駅)

写真5 えちごトキめき鉄道ET122形(泊駅)

3-3. あいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道

 あいの風とやま鉄道とIRいしかわ鉄道は、2015年(平成27年)3月14日の北陸新幹線の長野駅〜金沢駅間の開業に伴い、JRから経営分離されたJR北陸本線の金沢駅〜直江津駅間のうち富山県区間である倶利伽羅駅〜市振駅間と石川県区間である金沢駅〜倶利伽羅駅間の運営を担う鉄道事業者として、あいの風とやま鉄道は富山県および富山市をはじめとする県内全15市町村、民間企業により、IRいしかわ鉄道は石川県と金沢市と津幡町、財団法人石川県市町村振興協会、民間企業からの出資により設立された。富山県区間である倶利伽羅駅〜市振駅間の100.1kmは、あいの風とやま鉄道があいの風とやま鉄道線として、金沢駅〜倶利伽羅駅間の17.8kmは、IRいしかわ鉄道がIRいしかわ鉄道線として運営している。
 運行形態は、IRいしかわ鉄道とあいの風とやま鉄道は金沢駅〜倶利伽羅駅〜富山駅間で相互直通運転を実施しており、IRいしかわ鉄道線のみを運行する列車は設定されていない。金沢駅〜倶利伽羅駅〜富山駅間、高岡駅〜富山駅間、富山駅〜泊駅間を中心に運行されており、金沢駅〜泊駅間を通して運転される列車もある。泊駅から市振駅間は、えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインがあいの風とやま鉄道の泊駅まで乗り入れる方式を基本としている。あいの風とやま鉄道は、1日2往復のみ糸魚川駅まで乗り入れている。車両は、JR西日本から譲渡された521系が使用されている。
あいの風とやま鉄道/IRいしかわ鉄道521系(富山駅)

写真6 あいの風とやま鉄道/IRいしかわ鉄道521系(富山駅)


参考文献
  • JR西日本:「北陸新幹線スペシャルサイト」、http://hokuriku-w7.com/、2015年8月参照
  • 国土交通省:「新幹線鉄道について」、http://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr1_000041.html、2015年8月参照
  • しなの鉄道:「しなの鉄道株式会社」、http://www.shinanorailway.co.jp/、2015年8月参照
  • えちごトキめき鉄道:「えちごトキめき鉄道株式会社」、https://www.echigo-tokimeki.co.jp/、2015年8月参照
  • あいの風とやま鉄道:「あいの風とやま鉄道 Railways 富山県」、http://ainokaze.co.jp/、2015年8月参照
  • IRいしかわ鉄道:「IRいしかわ鉄道株式会社」、http://www.ishikawa-railway.jp/、2015年8月参照


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