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〜 西武池袋線の車両たち 〜

交通システム工学科1年 5037番 K.K

1. はじめに

 西武池袋線は池袋を起点に練馬、所沢、入間市、飯能を経て吾野まで至る約57.8kmの路線である。埼玉県南部や東京都北西部のベッドタウンから東京都心部を結ぶ西武鉄道の主要路線として通勤通学の足となっている。また、練馬から分岐する西武有楽町線を介して東京メトロ有楽町線と副都心線、東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線との相互直通運転や西武秩父線と合わせて秩父鉄道への乗り入れを行っており、横浜と東京、埼玉を直結する機能も果たしている。
 今回はそんな西武池袋線の車両について解説していく。


2. 西武池袋線の現有車両

2-1. 2000N系

 2000系は駅間が短く、平坦区間が多い新宿線用に設計された車両である。1977年に登場し、西武初の界磁チョッパ制御、直流複巻電動機、電力回生ブレーキを装備した車両であり、高性能車としては初の4扉車となった。
 1次車から11次車まであり、製造車両数の多さゆえに西武車両の一大勢力を誇る。新宿線用に開発された車両であるが、1990年度以降は池袋線にも投入された。2000系は大きく分けて1次車から5次車までの2000系と、6次車から11次車までの2000N系に区分されるが、池袋線に所属している2000系は2000N系のみであるため、2000N系について解説していく。
2000N系電車

写真1 2000N系電車
 2000N系は池袋線の旧型車の廃車代替計画によって1988年に登場した。2000系が登場してから10年が経過しており、大幅なデザインの変更が図られた。前面は東急車輛製造によるデザイン、側面の窓は一段下降式窓を採用し、2000系では無かった戸袋窓が復活した。2000系と同じ界磁チョッパ制御を採用しているが、2097編成のモハ2097のみ、性能試験で使用されてきた三菱製のGTO素子VVVFインバータ制御装置を搭載している。
 車両編成は2両固定編成(クハ+クモハ)・4両固定編成(クハ+モハ+モハ+クモハ)・6両固定編成(クハ+モハ+モハ+モハ+モハ+クハ)・8両固定編成(クハ+モハ+モハ+モハ+モハ+モハ+モハ+クハ)がある。
 基本的に池袋線系統の列車は4両・8両・10両で運用されている為、池袋線に6両固定編成の配置は無い。2両固定編成は8両固定編成に増結しての優等運用ないしは2編成つなげての支線とされる狭山線運用、4両固定編成は狭山線運用ないしは2編成つなげての8両運用、8両固定編成は各停・優等運用に使われる。
 登場から約10年経過した2000年代からは、メンテナンスコストの観点から編成によってパンタグラフの削減や方向幕のLED化などが順次行われている。
 2007年度からはバリアフリー化と車体の劣化部分の補修ならびに車内更新を目的として、東急車輛製造にて車いすスペースの設置、30000系と同様の座席モケットへの交換、戸袋窓の廃止、菱形パンタグラフシングルアームパンタグラフへの換装、車体表記の銘板化などの大規模更新工事が施工された。しかし、施工は僅かな編成数だけに留まり、東急車輛製造が総合車両製作所に変更されてからは大規模更新工事が行われていない。
 近年は簡易的な更新工事が自社内で行われており、ベンチレーターの撤去やコンプレッサーの交換、パンタグラフ撤去した箇所の歩み板や配線の撤去、MGのSIV化などが実施されている。
大規模更新工事施工車の外観

写真2 大規模更新工事施工車の外観
大規模更新工事施工車の車内

写真3 大規模更新工事施工車の車内
 池袋線には2000N系のみが所属していると先で述べたが、検査などにより車両不足が発生した場合は新宿線所属の2000系が一時的に貸し出され、池袋線の運用に就くことがある。新宿線所属の幕式行先表示器の編成は、新宿線系統の行先しか入っていないため、LED式行先表示器の編成に限定される。
池袋線運用に就く2000系電車

写真4 池袋線運用に就く2000系電車

2-2. 4000系

4000系電車

写真5 4000系電車
  4000系は秩父鉄道乗り入れ用に設計された車両で、1988年に登場した。多段式電動カム軸抵抗制御、片側2扉のセミクロスシート、トイレが付いた近郊型電車である。平日は池袋線の飯能から吾野、西武秩父線の西武秩父までの区間運用に入っており、土休日は秩父鉄道乗り入れの快速急行、急行として池袋まで顔を出す。
 主に走行する西武秩父線は、25‰の急勾配が全線で連続する山岳路線であるため、抑速発電ブレーキは必要不可欠であり、制御装置、主電動機、台車などの走行に必要な機器類は、走行歴から信頼のある101系の廃車発生品をそのまま流用した。12編成製造され、車両編成は4両固定編成のみで(クハ+モハ+モハ+クハ)となっている。車体は2000N系に似たデザインとなっている。車体塗装はライオンズカラーを意識した白地に赤、緑、青のラインが入っている。
 地方ローカル線ではおなじみの半自動扱いを行う際の開閉ボタンも採用され、西武では最初で唯一の例となっている。また、栓抜きが設置された日本で最後の鉄道車両であることが特筆される。
 西武秩父線のワンマン化に伴い行われた車両工事では、デッドマン装置付きマスコン化、車内通話装置が整備され、車いすスペースの設置、妻部のロングシート化、車内監視装置が設けられた。また、車両工事に合わせて菱形パンタグラフからシングルアームパンタグラフに換装された。近年ではベンチレーターの撤去が行われている。

2-3. 6000系

6000系電車

写真6 6000系電車
 6000系は営団地下鉄有楽町線への乗り入れ用の車両として設計された車両で、1992年に登場した。西武初のオールステンレス車体(6,7次車はアルミ車体)、西武初の10両固定編成、車体塗装を青色の帯にするなど、今までの西武車両のイメージを覆すものとなった。25編成製造され、制御装置は日立製の3レベルGTO素子のVVVFインバータ、台車は西武FS台車ではなくボルスタレス台車(6,7次車はモノリンク台車)を採用、列車情報装置を備えるなど、当時としては最新の機能を備えた。車両編成は10両固定編成のみで(クハ+モハ+モハ+サハ+モハ+モハ+サハ+モハ+モハ+クハ)となっている。
 側面デザインは2000N系を踏襲しつつも、前面はFRP一体成型で貫通扉が右端に移り、前面ヘッドライトは角型シールドビームとなった。テールライトはヘッドライトと同じライトケース内に一体化されている。
 2006年度からは東京メトロ副都心線、東急東横線、横浜高速みなとみらい線に相互直通運転するための改造工事が行われた。主な改造メニューは、マスコンのT型ワンハンドル化、前面及び側面行先表示器のフルカラーLED化、TIS(車両制御情報管理装置)・ATO(自動列車運転装置)の搭載である。ただし、この改造工事は先行試作車である1次車の2編成には施工されなかった。
 近年では6056編成が三菱SiC-VVVFに、6057編成が東芝PMSM(永久磁石同期電動機)に制御装置が変更された。また、2015年4月18日から6057編成が「黄色い6000系電車」として黄色くラッピング塗装されている。
黄色い6000系電車

写真7 黄色い6000系電車


2-4. 9000系

9000系電車

写真8 9000系電車
 9000系は西武所沢車輌工場最後の新製車で、1993年に登場した。8編成製造され、車体構造は2000N系とほぼ同一、車内は6000系をベースとしたサービス設備、足回りの機器は101系の廃車発生品の多段式電動カム軸抵抗制御が再利用され製造された。車両編成は10両固定編成のみ(※現在)で(クハ+モハ+モハ+サハ+モハ+モハ+サハ+モハ+モハ+クハ)となっている。
 2000N系と似た外観だが、電気連結器の有無、前面手すりがステンレス地から黒塗りに、屋根上機器配置は6000系と同じ仕様になった。9108編成の中間車6両は西武所沢車輌工場最後の新造車であることが特筆される。本来は新宿線用に設計されたが、現在は全編成が池袋線に所属となっている。
 2003年10月下旬に9106編成が武蔵丘検修場に入場し、多段式電動カム軸抵抗制御から日立製VVVFインバータ制御装置に交換され、2004年2月に出場した。その後各種試験が行われたのち、順次全編成が日立製VVVFインバータ制御装置に交換された。また、回生ブレーキの装備、シングルアームパンタグラフ化、パンタグラフ削減が同時に行われた。
 近年では、側面戸袋窓の閉鎖やベンチレーターの撤去などが行われた。また、2014年7月19日から9103編成が京急電鉄とのタイアップで「幸運の赤い電車」として、京急の車両と同じ塗装が施されている。
幸運の赤い電車

写真9 幸運の赤い電車

2-5. 10000系

10000系電車「ニューレッドアロー」

写真10 10000系電車「ニューレッドアロー」
 西武特急として歴史を作ってきた5000系レッドアローは、リニューアル工事が行われていたものの、車体の老朽化が著しかった。また、新宿線での特急運行開始も視野に入れていたため、新たに特急車両の新造が必要になった。そこで1993年に登場したのが、ニューレッドアロー10000系である。製造は全車日立製作所が担当し、12編成製造された。制御装置は抑速発電ブレーキを付けた電動カム軸制御装置、ブレーキ制御装置は101系や5000系などの旧来車両のものを再利用している。ただし、最終編成の第12編成のブレーキは抑速発電ブレーキではなく回生ブレーキ付き全電気指令電磁直通ブレーキ、制御装置はIGBT3レベルVVVFインバータを採用した。車両編成は7両固定編成のみで(クハ+モハ+モハ+サハ+ハ+モハ+クハ)となっている。
 「ゆとりとやすらぎの空間」をコンセプトに、5000系よりもシートピッチを1,070mm拡げた。また、車内はバリアフリーを考慮しており、車いす対応の座席と大型トイレが設置された。現在も奥武蔵・秩父方面への観光輸送をはじめとして、快適な車内での通勤輸送にも活躍している。
 2011年11月27日から「レッドアロークラシック」として10105編成が初代レッドアロー5000系の塗装に復刻されている。

2-6. 20000系

20000系電車

写真11 20000系電車
 20000系は「シンプル・クリーン」をコンセプトに、「環境と人にやさしい」をテーマに開発され、6000系をベースにしつつも更なる省エネルギー性、省メンテナンス、快適性を追求し1999年に登場した車両である。車体はアルミダブルスキン構造を採用したことで、大幅な軽量化を実現した。日立製作所のA-trainのひとつであり、私鉄初のA-trainであることが特筆される。制御装置はIGBT3レベルVVVFインバータ、西武初のワンハンドルマスコンや、シングルアームパンタグラフ、LEDによる前面及び側面行先表示器を採用した。また、本形式より電子ホーンが採用された。2002年以降の車両は床面を30mm下げてホームとの段差を少なくしている。
 車両編成は8両固定編成(クハ+モハ+モハ+サハ+サハ+モハ+モハ+クハ)・10両固定編成(クハ+モハ+モハ+サハ+サハ+モハ+サハ+モハ+モハ+クハ)がある。なお、8両固定編成は将来の10両化を見越した車番の振り方をしている。

2-7. 30000系

30000系電車

写真12 30000系電車
 30000系は「Smile Train 〜人にやさしく、みんなの笑顔をつくりだす車両〜」というコンセプトのもとに開発した、2008年登場の西武の新型車両である。車体構造は20000系と同様のアルミダブルスキン構造を採用した。制御装置はIGBT2レベルVVVFインバータを装備している。拡幅車体にしたことで車内スペースを広くし、大型ガラスの貫通扉を採用することで室内が明るくなった。また、15インチカラー液晶画面による情報提供(スマイルビジョン)や車体の低床化などのユニバーサルデザインや省エネルギーにも配慮したものとなった。また、設計に携わった女性社員の意見を生かしたタマゴ型の吊り革など個性あふれるインテリアデザインが施されている。
 車両編成は2両固定編成(クハ+クモハ)・8両固定編成(クハ+モハ+モハ+サハ+サハ+モハ+モハ+クハ)・10両固定編成(クハ+モハ+モハ+サハ+サハ+モハ+サハ+モハ+モハ+クハ)がある。登場する前年の2007年段階では6両固定編成の製造が計画されていたが、現在に至るまで製造されていない。2013年度から増備された10両固定編成からは、運転性能を維持しつつも省エネルギー性を向上させた主回路装置を採用することで、従来の30000系より走行時の消費電力が10%削減された。さらに車内のLED照明の本格採用により、現行照明装置から消費電力が30%削減された。また、スマイルビジョンを現行の15インチから17インチに拡大することで視認性の向上を図った。さらに、荷棚の高さを50mm下げることで荷物の上げ下ろしを容易にし、現行の丸パイプからガラスにすることで細かい荷物が落下しない構造とした。


3. 西武池袋線を走っていた車両

3-1. 101系

101系電車

写真13 101系電車
 101系は1969年の西武秩父線開業に合わせて製造された車両で、主電動機は製造当時最大出力の150kWのものを採用した。3扉車で制御器は多段式電動カム軸抵抗制御、ブレーキ装置は応荷重装置を持ち、西武秩父線の走行を考慮した抑速発電ブレーキの搭載といった、山岳路線に耐えうるハイパワーな機器を備えつつ、高加速度を実現した101系は、当時としては高性能な通勤型電車であった。101系と呼ばれるグループは1976年までの間、8次車にわたり278両が製造された。車両編成は4両固定編成(クハ+モハ+モハ+クハ)・6両固定編成(クハ+モハ+モハ+モハ+モハ+クハ)となっていた。後述の101N系と連結して運用できることから、様々な編成組成で各停から優等までフルに運用に就いた。池袋線からは2004年に撤退、2011年に多摩川線から引退したことで形式消滅した。

3-2. 101N系

101N系電車

写真14 101N系電車
 2000系の製造が始まったこともあったため、一時中断されていた101系の製造だが、1979年から製造を再開した。前面デザインを湘南顔に維持しつつ、当時流行のデザインであった額縁スタイルの高運転台仕様に変更した。これが101N系である。車両編成は2両固定編成(クモハ+クモハ)・4両固定編成(クハ+モハ+モハ+クハ)が存在した。2012年に池袋線から撤退した。

3-3. 301系

301系電車

写真15 301系電車
 1980年12月に増備された101N系の4両編成は車両番号が300番台の区分となり、305編成が登場した時点でこれらの編成は301系とされた。301〜309編成の4両固定編成が5本登場したのち、1982年度から各編成にサハ1301形を含む4両が組み込まれて8両固定編成となった。車両編成は8両固定編成のみで(クハ+モハ+モハ+サハ+サハ+モハ+モハ+クハ)となっていた。
 1983年に311編成が、1984年に313編成が登場した。両編成は新製時から8両固定編成で、後述する3000系と同時期に製造されたことから、連結器胴受けの形状や車側灯が2灯になった点が3000系に準じている。
 新101系と301系の相違点は、新101系が2連固定編成・4連固定編成であるのに対し301系が8両固定編成という点だけで、外観や性能面ではほぼ同一である。2012年に池袋線から引退したことで形式消滅した。

3-4. 3000系

3000系電車

写真16 3000系電車
 新宿線は2000系が増備され、界磁チョッパ制御による省エネルギー性の効果があがる一方で、池袋線は勾配に強く馬力の大きい101系、101N系、301系が主力だったため、省エネルギー性の問題では遅れをとっていた。そこで、1983年に登場したのが3000系である。
 3扉の車体に、2000系同様の界磁チョッパ制御、電気指令式電磁直通ブレーキを採用した仕様で、西武の車両としては初めての側面行先表示器を設置した。車両編成は6両固定編成(クハ+モハ+モハ+モハ+モハ+クハ)・8両固定編成(クハ+モハ+モハ+モハ+モハ+モハ+モハ+クハ)となっていた。6両固定編成は国分寺線専用車で、池袋線には8両固定編成のみ所属していた。
 2000年代後半にクハにスカートが付いたこと、転落防止幌が取り付けたこと以外、特に目立った改造はされなかったが、2009年5月に西武初の車体全面ラッピング電車として、3011Fを使用した銀河鉄道999のイメージ電車、「銀河鉄道999デザイン電車」が登場した。また、3011Fに続くラッピング車として、3015Fを使用した埼玉西武ライオンズのイメージ電車、「L-Train」が登場した。2014年に池袋線から引退したことで形式消滅した。
「銀河鉄道999デザイン電車」と「L-Train」

写真17 「銀河鉄道999デザイン電車」と「L-Train」


参考文献
  • 鉄道ピクトリアル:「【特集】西武鉄道」、鉄道図書刊行会、2013年12月10日発行
  • 鉄道ファン:「2007年1月号」、交友社、p166、2007年1月1日発行
  • 西武鉄道:「「黄色い 6000 系電車」 の運行を開始します」、http://www.seibu-group.co.jp/railways/news/news-release/2015/__icsFiles/afieldfile/2015/04/13/20150413y6000.pdf、2015年8月参照
  • 西武鉄道:「「幸運の赤い電車」(RED LUCKY TRAIN)の運行を開始します」、http://www.seibu-group.co.jp/railways/news/news-release/2014/__icsFiles/afieldfile/2014/07/09/20140709keikyuseibu.pdf、2015年8月参照
  • 西武鉄道:「電車図鑑」、http://www.seibu-group.co.jp/railways/smile/zukan/、2015年8月参照


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