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〜 一風変わった駅 Ver.2
−北海道special− 〜


交通システム工学科2年 4109番 K.M

1. はじめに

 我々一人ひとりには、自宅の最寄り駅が1駅以上存在する。自宅から最寄り駅までの距離や手段は様々であるが、我々が駅の機能として考えたとき、基本的に列車に乗るためや切符を買うために使う、単なる通過点として考えがちではなかろうか。しかし、駅によっては称号のようなものがある駅がある。
 北海道には特にそのような駅が多い。この夏、10日間に渡り北海道を旅した記録も兼ねて色々な特徴の駅を紹介する。


2. 日本一の秘境駅「小幌(こぼろ)駅」

2-1. 概要

 小幌駅は室蘭本線静狩(しずかり)〜礼文(れぶん)の間にある駅で、特急停車駅でいうと長万部(おしゃまんべ)〜洞爺(とうや)の間に位置する。両方向はトンネルに囲まれており、閉鎖的な空間に存在する小幌駅は元々、蒸気機関車の煙抜きと保線用の詰所を設けるために信号所として生まれた。その後、旅客扱いも行うようになり、現在では駅として存在している。
 小幌駅が日本一の秘境駅と言われる所以は、駅周辺に舗装された道、民家、住民、小幌駅の生活利用者が全くないことである。従って、この駅へ到達するためには鉄道でこの駅に降り立つしかない。日本一という基準は、日本全国の秘境駅を訪問してきた牛山隆信「秘境駅ランキング」で1位となったことから。
小幌駅全景

写真1 小幌駅全景

2-2. 駅から唯一のアクセス林道

 この駅からは、舗装されていない林道が山側方面と海側方面で存在する。山側にある林道はほぼ足場がなく、雑草が生い茂っており危険だと判断し、訪問を見送った。駅の山側には国道が通っているので、もしかするとそこに通ずるのかもしれないが、道とは言えない程状態が悪いためアクセスはほぼ不可能であろう。海側の道を少し歩くと、小幌洞窟・岩屋観音方面と内浦湾方面に分岐する交差点がある。小幌洞窟方面は一見足場がしっかりしているようだが、途中から道が崩壊しており登山技術やロープを使ってのクライミングが必要であるため、一般の人は到達不可能とされる。私は運動が大の苦手で怪我をしたくなかったため、3つの林道の内唯一内浦湾方面だけへ向かった。内浦湾へは交差点から15分もかからずに出られるが、雨が降っていれば足が悪く、晴れていれば虫に刺されるため、長袖長ズボンで肌が露出する部分を減らし、虫よけスプレーなどを携帯するとともに、歩きやすい靴での訪問を推奨する。
小幌洞窟方面の林道

写真2 小幌洞窟方面の林道
小幌駅前の内浦湾

写真3 小幌駅前の内浦湾

2-3. 小幌駅の現状

 小幌駅は普通列車でも通過する列車が存在するため、一日に長万部方面は5本、東室蘭方面は3本しか停車しない。また、構内踏切はあるものの、ホームは狭く特急列車や貨物列車などの通過列車がとても多いため注意が必要である。駅周辺には保線作業のための詰所などの建物があるが一般客は立ち入ることができず、ホームには屋根がないため、悪天候時の訪問は避けるべきである。私は2014年3月にも小幌駅へ訪問しているが、当時は吹雪でホーム上も除雪はされておらず身動きが取れなかった。構内踏切も雪に埋もれ反対方向のホームに行くために線路を渡ろうとすると、列車が通らず除雪もされていない線路と線路の間には腰ほどの雪が積もっていて大変危険であった。当然ながら林道も雪に埋もれて歩くどころかどこにあるかわからない。小幌洞窟や内浦湾への当駅からの訪問は絶対不可能である。
 この小幌駅は、利用客がそもそも鉄道ファン以外皆無であることやJR北海道の経営合理化等を理由に、今年(2015年)10月に廃止される見込みであったが、この駅の所在地にあたる豊浦町役場は観光資源として駅存続を求めたことにより、それが決定した。
真冬の小幌駅(2014年3月撮影)

写真4 真冬の小幌駅(2014年3月撮影)


3. 日本最東端の駅「東根室駅」

3-1. 概要

 東根室(ひがしねむろ)駅は根室本線(愛称花咲線)の終点根室駅の一つ手前の駅で、日本最東端の駅である。根室本線自体は東西に延びているのだが、終点の根室駅は東根室駅から大きく北から西方面にカーブするため根室駅より東に位置する。駅前には小さな砂利の広場と舗装された道路があり、秘境駅ではないので車での訪問も容易である。根室市街の端に位置し、住宅もたくさんあるため生活利用者は一定数いそうだが、当駅を通過する快速「はなさき」「ノサップ」が一往復ずつあり、普通列車でも通過する列車がある。また、根室駅と東根室駅は根室本線営業キロで1.5kmしかないため、東根室駅が最寄りでも根室駅を利用している住人もいそうだ。
東根室駅の駅名標と日本最東端の駅を示す標

写真5 東根室駅の駅名標と日本最東端の駅を示す標

3-2. 東根室駅・根室駅と根室市街

 東根室駅は日本すべての「駅」として日本最東端である。一方の根室駅は、日本最東端の終着駅でもあり有人駅でもある。また、根室市街は最東端の市街地ということで日本一早く日が昇る街であることから、「朝日に一番近い街」「日本の太陽は根室から登る」というようなキャッチフレーズがある。
根室駅舎

写真6 根室駅舎


4. 日本最北端の駅「稚内駅」

4-1. 概要

 稚内(わっかない)駅は宗谷本線の終点の駅で、日本最北端の駅である。開業当時の稚内駅は現在の稚内駅の一つ手前の南稚内駅であったが、樺太航路の港より離れていたため、現在の稚内駅まで延伸された。その後稚内桟橋まで延伸されたが現在は廃止されている。駅前広場には日本最北端の駅の車止めがレールとともにおかれている。
 日本最東端の東根室駅と違い、稚内駅は終着駅でもあり終日有人でみどりの窓口もある。特急「スーパー宗谷」「サロベツ」の終着駅でもあることから、駅の規模としては東根室駅や根室駅よりも大きいと言える。
稚内駅舎と車止め

写真7 稚内駅舎と車止め

4-2. 新しくなった稚内駅舎

 平成23年4月3日に現在の新しい駅舎になり、道の駅も兼ねるようになった。駅舎内にはお土産屋や食事処、日本最北端の地である宗谷岬へ行くバス等が発着するバスターミナルが併設しており、駅として以外の機能が充実しているため、観光客等でにぎわっている。
宗谷岬日本最北端の地の碑

写真8 宗谷岬日本最北端の地の碑


5. 高倉健ゆかりの地で廃止予定の駅「増毛駅」

5-1. 概要

 増毛(ましけ)駅は、留萌本線の終着駅であり、留萌からさらに先の駅である。この駅は以前貨物駅として重要な拠点で、機関車の向きを回転する転車台もあった。現在は1面1線の棒線駅で留萌駅まで列車交換はできず、貨物の留置線の後は現在広い空き地としてその名残がうかがえる。駅舎内にはお土産や地元の名産などが販売されており、無人駅という扱いだが、その店員はいるので有人ともいえる。
増毛駅全景

写真9 増毛駅全景

5-2. 増毛駅にまつわる2つのもの

 増毛駅はその駅名から「増毛(ぞうもう)」とも読め、髪の毛の薄い人へとって縁起のいい駅・地域であるとされている。留萌駅には増毛駅の入場券が売っており、髪が薄い人やそうなりたくない人がお守りとして購入する人も少なくない。
 増毛駅とその周辺地域は、高倉健主演の「駅 Station」の舞台である。私が当駅に訪問した時は鉄道ファンの他、高倉健のファンの方々も多くの人が訪問していた。また、増毛駅前の街並みも映画に登場しており、商店街や食堂なども観光客であふれている様子だった。
 増毛駅は平成28年秋の留萌本線留萌〜増毛間の廃止とともに駅としての役目を終える予定である。しかし、高倉健ファンなどの観光客や地元住民は高倉健ゆかりの地の駅ということで、駅舎だけでも存続を望んでいる。


6. おわりに -駅とはなにか-

 この読者であるあなたは、「駅」をどう思っているだろうか。ほとんどの駅には通勤・通学などに利用する客がいる。もしあなたの最寄り駅が廃止されたら、どう思うだろうか。1時間当たり何本も列車が来る駅を利用している人にとっては、駅があること、列車が発着することが当たり前だと考えがちである。しかし利用客にとっては、3分間隔に列車が来る駅でも何時間に一本しか来ない駅でも、その駅を必要としているのは一緒だ。
 私は、生活利用者(通勤通学以外でも、病院やお出かけでの利用者も含む)が1人以上いる駅は全て残すべきだと思っている。一方、別の交通手段でいいではないかという意見がある。バスに代行させた方が経営合理化に良いことなどで、特に北海道で廃止された鉄道はそれに並走している道路でバスによってまかなわれているところが多くある。しかし、バスは鉄道よりも不便であるとされて、観光客が減少してしまうという危機感が生まれることと同時に、最寄り住人が当たり前に駅を使って列車に乗っていたことができなくなったとき、その有難みを強く感じることから反対することが多い。それは、今まで駅や列車を使っていたことに対する愛着が、知らず知らずのうちに生まれていたこともあるだろう。
 一方都心部の住む私達は、駅が当たり前にある環境に慣れてしまい、自分の関係のない駅が廃止されると聞いてもなんとも思わない人が多いかもしれない。鉄道ファンに対しても撮り鉄や模型など車両についての趣味が多く、駅については陰に埋もれている魅力というものが存在すると私は感じる。交通機関を「足」というように、それとを接続する駅は「腰」とも言えよう。腰は字の通り人間の部位の中で「要(かなめ)」である。日本全国どんな駅も利用者にとって「要」であることを、特に都心部に住む私達は意識することが必要に思う。


参考文献
  • JR北海道:「JR北海道- Hokkaido Railway Company」、http://www.jrhokkaido.co.jp/、2015年8月参照
  • JR北海道旭川支社:「北海道旅客鉄道株式会社旭川支社」、http://www.jrasahi.co.jp/、2015年8月参照
  • 北海道旅行情報:「高倉健主演映画「駅(STATION)」の舞台・歴史の街「増毛」を歩く。」、http://uu-hokkaido.jp/recommend/mashike.shtml、2015年8月参照


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