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〜 JR東日本701系 〜

交通システム工学科1年 5043番 D.K

1. 導入

 私の故郷である秋田県は、701系が活躍する地域である。幼少の頃より幾度となく乗車してきた大変馴染み深い車両であるが、身近な存在ゆえあまり目を向けてこなかった。本記事では奥羽本線秋田地区で活躍する701系を地元視点から論述する。


2. 概要

2-1. 導入経緯

 701系は1993(平成5)年3月、奥羽・羽越本線秋田地区に導入された車両である。当時の秋田地区では50系客車が活躍していたが、客車の組み替えや機回し作業が必要で非常に非効率な運用を強いられていた。さらに牽引する機関車であるED75の老朽化も深刻で、これらの問題解決のため50系客車の置き換えを目的とした701系が誕生した。

2-2. 車両概要

 701系は効率的な輸送形態を整備し、入換業務を大幅に減らすことをコンセプトにした電車である。VVVFインバータ制御の採用と軽量化によって保守やランニングコストの低減を図り、さらに冷房化や洗練された内装で旅客サービスの向上をめざした。基本編成はクモハ701形+クハ700形の2両編成(1M1T)とクモハ701形+サハ701形+クハ700形の3両編成(1M2T)の二種類である。車体は京浜東北線209系に準拠したステンレス構造になっている。片側3扉で半自動式、オールロングシートを基本としている。
秋田駅に停車中の701系N30編成

写真1 秋田駅に停車中の701系N30編成
 1993年3月から10月にかけて投入された0番代は主に川崎重工業が製造したが、第14〜17編成の2両編成4本が土崎工場で製造された。
 1994(平成6)年10月から1995(平成7)年にかけては100番代が土崎工場で製造された。大きな特徴は尾灯の位置が上方に200mm移設されている点と座面が赤色になっている点である(なぜか古臭い匂いがする)。当初は全車が秋田に配属されたが、1999(平成11)年に仙台に転属した。その後2007(平成19)年と2010(平成22)年に計4編成が秋田に戻ってきている。2013年には秋田の1編成が再び仙台に転属した。


3. 問題点

 前述した通り701系はオールロングシートを基本としている。それまで秋田地区の車両はボックスシートばかりであっただけに、導入当初は相当な批判や戸惑いの声があったようだ。特に盛岡地区では市民フォーラム「通勤電車を考える」(1995年)が開かれたほどである。では一体、ロングシートの何が問題なのか。地元利用客としての観点から言わせてもらうと、それは「少ない座席数」であると考える。意外かもしれないが秋田のような地方、それもラッシュを過ぎた日中でも座席が埋まり座れないことが多くある。座れないことくらい大したことではないと思うかもしれないが、秋田では座れないことは大きな問題である。特に冬季は乗客の靴に付着した雪によって床が滑りやすくなっているため、立ったままだと転倒するおそれがあるのである。つり革や手すりも設置されてはいるが、高齢者や子供には手が届かないうえ、手すりもドア横にあるのみである。これではあまりにも危険である。
701系の車内

写真2 701系の車内
701系だが、内装は秋田地区とほぼ変わらない
 ではなぜ、701系はロングシートになったのか。朝夕の混雑緩和も理由のひとつであると思われるが、最大の理由としては高校生のマナーの悪化が挙げられている。当時は高校生が菓子袋や空き缶を車内に放置したり堂々と喫煙したりすることで、車内が汚れて非常に迷惑していたという。さらには仲間同士でデッキに固まる、席取りをするなど目に余る行為に苦情も多かったという。このようなふるまいをやめてもらうためにロングシートにしたと当時のJRは述べている。
 その観点から見ればロングシート化は正しい選択だったかもしれない。だが高校生よりも高齢者の利用が目立つ現在では、むしろ旅客サービスの低下を招いているのではないだろうか。少子高齢化著しい秋田において、高齢者が利用しづらい車両を走らせているのは矛盾していると言わざるをえない。701系の登場から20年以上が経過した今、E721系の導入とまではいかなくても、オールロングシートをセミクロスシートに改造するなど、地域の実情に合った車両を導入することを検討してもよいのではないだろうか。


4. おわりに

 いままで701系についてこれほど深く調査したことはなかったので、初めて知った事も多々あった。今回の記事作成は、いままで何気なく乗ってきた車両に改めて目を向けるいい機会になった。賛否両論ある車両ではあるが、私としてはこれからも、701系が地域の人に親しまれて走り続けることを願ってやまない。


参考文献
  • 鉄道ジャーナル:「北国の通勤形電車701系快走!」、『鉄道ジャーナル』、pp.60-69、No.390
  • 鉄道ジャーナル:「秋田地区の普通列車を見る」、『鉄道ジャーナル』、pp.48-59、No.330
  • 交通新聞社:「701系電車のあゆみと現況」、『鉄道ダイヤ情報』、pp.48-59、2010年12月


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