交通システム工学科3年 3102番 Y.N |
今回のEXPRESSの特集のテーマが「地元の車両」であり、横浜市南部に住む私にとって地元の車両といえば京急であるが、隣接する鎌倉市も電車で30分程度の距離に位置している。そこで今回は鎌倉市を走る、日本でもかなり有名な鉄道であろう江ノ電こと江ノ島電鉄(以下江ノ電に統一する)の車両をテーマとした。江ノ電には2015年現在6形式の個性的な車両が存在する。江ノ電の車両は急カーブに対応するためすべて2両1組の連接車であり、2本つなげた4両編成で運行されることが多く、つりかけ車や最古参車と新型のVVVF車など、区別なくどの形式も相互に連結可能である。今回は登場年が新しい順に紹介していく。 500形は最古参車の300形置き換えのため、2006年に最初の編成が登場した。江ノ電初かつ2015年現在唯一のVVVFインバーター制御車両である。車体の前面は2003年まで現役であった旧500形をイメージし、丸みを帯びたデザインになっている。 車内は20形がベースだが、鎌倉寄り車両の乗務員室背後にあったクロスシートは折り畳み式のロングシートに変更されており、全面展望で人気のクロスシートは藤沢寄り車両にのみ設置されている。また、各ドア上には液晶ディスプレイが2面設置され、次駅案内や観光案内の情報を提供している。 2008年には2編成目が製造され、2015年現在501-551号車と502-552号車の2編成が在籍している。 501-551号車は300形の304-354号車、502-552号車は303-353号車をそれぞれ置き換える形で登場したが、台車などの一部の走行機器は置き換えた車両のものを再利用している。 ![]() ![]() 20形は江ノ電開業100周年記念と旧500形置き換えを目的として、2002年と2003年に1編成ずつ導入された。車体は次にあげる10形をベースにしているが、塗装は従来の江ノ電と同様のグリーンとクリーム色に改められた。車内は乗務員室背後を除き全てロングシートに変更された。また、江ノ電で初めてドアチャイムが設置された。2010年には江ノ電全線開業100周年を記念して、開業時の車両の塗装がラッピングされた。2015年現在21-61号車と22-62号車の2編成が在籍している。21-61号車は旧500形の501-551号車、22-62号車は502-552号車をそれぞれ置き換える形で登場したが、旧500形は晩年カルダン駆動に更新されていたため機器の使用年数が浅く、20形の走行機器の大半は置き換えた車両のものからの流用である。 ![]() 10形は1997年、江ノ電開業95周年記念と300形302-352号車の置き換えのために登場した。10-50号車の1編成のみ在籍している。車体の塗装は他の江ノ電の車両とは大きく変わり、オリエント急行をイメージさせる青とクリーム色である。車内は2000形をベースとしつつ木目調のレトロなデザインとしている。2000形との差異点は、鎌倉寄りの車両の乗務員室背後には江ノ電で初となる車いすスペースが設置された点、車両連結部は通路を挟んで2人掛けと4人掛けの向かい合わせのボックスシートのみで、ドア横に2人掛けのロングシートはない点、ドアは両開きのものに変更された点である。10形の走行機器は廃車となった車両からの流用ではなく完全な新造であり、パンタグラフは江ノ電で初めてシングルアーム型が採用された。 ![]() ![]() 2000形は1990年に登場した車両で、前面を大きな1枚ガラスとしているのが特徴である。車内は旧500形以来江ノ電では久々にクロスシートが設置され、乗務員室背後と車両連結部がクロスシート、扉間はロングシートである。走行機器などは6.に記す1000形のカルダン車がベースであるが、パンタグラフは江ノ電で唯一下枠交差型が使われている。2015年現在2001-2051号車、2002-2052号車、2003-2053号車の3編成が在籍しており、2001-2051号車、2002-2052号車は前面にスカートが設置されている。また、2003-2053号車は2007年からブルーを基調とした明治製菓の広告電車として運行されている。 ![]() ![]() 1000形は1979年に初登場した車両で、従来の単行車などを一掃し江ノ電の車両の近代化を図った。共通することとして、車内はすべてロングシート、2004年から2014年にかけてリニューアル工事が行われ、車いすスペースとドアチャイムが設置された。今年度中にはすべての編成のドア上に液晶ディスプレイが設置される予定である。2015年現在1001-1051号車、1002-1052号車、1101-1151号車、1201-1251号車、1501-1501号車、1502-1552号車の6編成が在籍しているが、登場年ごとに仕様や現在の塗装が少しずつ異なるのでそれぞれ分けて紹介する。 これら2編成はつりかけ駆動で当初は非冷房車であったがのちに冷房化され、2004年にリニューアル工事が行われ、その後500形をベースにした塗装に変更された。1001-1051号車は2009年から登場30周年を記念して登場時の塗装に復元されたが、2015年現在は500形をベースにした塗装に戻されている。1002-1052号車は2014年9月から1502-1552号車に代わり京都の京福電気鉄道(嵐電)と同じ京紫色の塗装になっている。 ![]() 1101-1151号車は先に挙げた2編成と同様につりかけ駆動で、登場当時は冷房準備工事がなされのちに冷房化された。2005年には当時放送された大河ドラマ「義経」をイメージしたラッピングが施された。2006年にリニューアル工事が行われた。2009年からは沿線の風景デザインがラッピングされた情報発信トレイン「S・K・I・P号」として運行され、開業110周年を迎えた2012年からは江ノ電のキャラクター「えのんくん」が描かれたデザインになり「スキップえのんくん号」として2015年現在も運行されている。 ![]() 1201-1251号車は江ノ電としては最後に製造されたつりかけ駆動車で、当初から冷房装置が取り付けられた。2004年まで長期にわたり白をベースとした明治製菓の広告電車であった。その後登場時の塗装に戻された後500形をベースにした塗装になった。2011年にリニューアル工事が行われたが、1201-1251号車からはドア上に500形と同じ液晶ディスプレイが2面設置された。2014年7月に台湾観光協会・チャイナエアライン・神奈川県観光協会・江ノ島電鉄の4社での「観光プロモーション協定」を締結した友好記念電車として現在も運行されている。 ![]() 1500番台の2編成はカルダン駆動方式で製造され、登場時の塗装はクリーム色の車体にオレンジのラインが入った「サンライン」と呼ばれる塗装であったが、のちに他の編成の登場時と同じものに改められた。1501-1551号車は2007年から2009年まで沿線の風景デザインがラッピングされた情報発信トレイン「S・K・I・P号」として運行され、その後「サンライン」塗装に復元されたが2013年にリニューアル工事が行われた際に500形をベースにした塗装に変更された。1502-1552号車は2004年に1201-1251号車に代わりクリーム色を基調とした明治製菓の広告電車として2007年まで運行されたのち500形をベースにした塗装になり、その後2009年から江ノ電と京福電気鉄道が姉妹提携を結んだことを記念した「嵐電号」として当時の京福電気鉄道の車両と同じ塗装で運行されていたが、リニューアル工事のため2014年に1002-1052号車へバトンタッチし、リニューアル工事後は再び500形をベースにした塗装となった。なおリニューアル工事では、1201-1251号車の内容のほかに行先表示器のLED式への変更や、パンタグラフのシングルアーム型への換装が追加して行われた。また、パンタグラフのシングルアーム型への交換は他の編成においても確認しているが、あくまで私自身で見たものなのでどの編成で行われたかは書かないことにして、写真で見ていただければと思う。 ![]() 最後に江ノ電の最古参形式で広告などにもよく使われ、新型車を差し置いてリーダー的存在になっているであろう300形を挙げる。2015年現在は305-355号車の1編成のみの在籍である。この編成は車体こそ新造だが、台枠等は他車の車両からの流用で1960年に登場した。90年代にはカルダン駆動方式に改造され、冷房装置も搭載されているが、車内の床は板張りのままである。そのため古い車体であるが走行機器は1000形よりも新しい。冒頭にも述べたが江ノ電の車両は形式問わずすべての車両連結可能なため、4両編成を組む時、その日の運用によっては最新車両である500形や20形と連結されることもある。 ![]() ![]()
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